★旧常盤軒(JR宗谷本線、音威子府駅。2021年2月に閉店)
「日本一うまい」とまで言われた駅そばでした。1933年創業。80年を超える老舗。JR宗谷本線、音威子府駅の構内で食べることができたお蕎麦ですが、店主の西野守さんが2020年2月に逝去され、翌日店舗は閉店となりました。数年前から体調は思わしくなく、店舗は断続的な営業とおりました。2018年夏、もう最後かもしれないと息子を伴って音威子府駅に寄ったのですが、そのときも「臨時休業」。そのまま、こちらの駅そばを食べる機会を得られず、今回の閉店となってしまいました。なお、「音威子府そば」は、道の駅のほか、村内の数店でいまも食べられます。
音威子府村は人口703人。これほど小さな町にある駅舎ですが、何と「みどりの窓口」がいまもあります。もともと、音威子府駅は廃止となった旧天北線(1989年廃止)の分岐駅で、乗り換え客が多くいました。音威子府村は国鉄の拠点として発展してきた村でした。乗り換え客に愛されたのが、この「音威子府そば」でした。
「常盤軒」のそばは、そばの実の甘皮ごとひいたもので、色は真っ黒。そばの風味はとてもよく、そこに昆布と煮干しを使っただし汁が食欲をそそりました。鉄道ファンはもちろん、ぼくのような車で訪れるお客さんも多くいました。
旅行作家だった宮脇俊三さんが、ここのお蕎麦を絶賛していたこともあり、雑誌などにも紹介され、1980年代には24時間営業をしていたり、お弁当の販売をしていたこともあったそうです。
いつも思うのは、「ここはいつか行けるから、後回し」というのは、北海道には当てはまらないということです。鉄路の廃止はもちろんですが、駅舎の廃止、駅弁の販売終了、周辺にある名物グルメ店の廃業・・。「行けるときに行っておかなければ」ということが、あまりにも多いように思います。北海道は他の地域に比べて、なおさら。コロナ禍で、人知れず廃業となっていたり、経営者の高齢化でひっそりと無くなっていたり、ということが現実にすごい勢いで始まっています。コロナが収束したら、ぜひ出かけてみたい、地域の遺産が消滅する前に観たり、味わったりしたい、という思いを強くします。