「観るだけ美術部」部長のブログ

「観るだけ美術部」勝手に部長です。入部希望者は、コメント欄にメッセージを残してください。折り返し、勧誘に伺います(笑)。

あしたはきょうより、きっといい日。

[道外展]★運慶 祈りの空間 興福寺北円堂展

(運慶『弥勒如来坐像(部分)』、国宝、鎌倉時代・1212年(建暦2年)ごろ、奈良興福寺、北円堂安置)

★運慶 祈りの空間 興福寺北円堂展

 東京/東京国立博物館、2025年9月9日(火)-11月30日(日)

(WEBサイト→)

www.tnm.jp

www.tnm.jp

 世界遺産興福寺の北西に位置する北円堂は、平安時代藤原不比等の追善のために721年に建立されるも、二度にわたって焼失してしまいます。1180年の兵士によるなんと焼き討ちの後は、復興に長い年月が費やされ、1210年ごろに堂宇が完成、造像は運慶一門が手掛けて、1212年ごろには北円堂諸仏が再興されたと推定されています。

 完成した仏像のうち、現在に伝わる弥勒如来坐像(本尊、国宝)、無著(むじゃく)・世親(せしん)立像(いずれも国宝)の3躯は、力強さや写実性を持ち合わせつつ静かな落ち着きに包まれており、運慶が晩年に到達した境地を見ることができます。また、このときの北円堂の四天王像は、長い間失われたものとされてきましたが、現在中金堂に安置されている四天王像がこれにあたるという説が近年支持を集めています。賑やかな装飾、激しい表情の四天王像は、その堂々とした優れた造形から運慶一門の作にふさわしい姿です。

 本展では、北円堂の弥勒菩薩像と無著・世親像、そして中金堂の四天王像を組み合わせて展示することで、鎌倉復興当時の北円堂内陣の再現を試みるものです。弥勒菩薩像は2024年度の修理後初公開で、寺外での公開はおよそ60年ぶり。この機会をお見逃しなく、運慶の最高傑作が織りなす空間を、ぜひお楽しみください。」

 

※なお、こちらの掲載画像は、当ブログが独自に定めるガイドラインに基づき、東京国立博物館さま(HP)よりお借りしました。

 

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[部室から]★第170回 観るだけ美術部 部会

 「観るだけ美術部」部員の皆さま、また日ごろから「観るだけ美術部」を応援していただいている皆さま、いつもありがとうございます。それではこれより、第170回「観るだけ美術部」の部会を始めてまいります。今回も(1)「観るだけ美術部」部長の連絡・報告、(2)(妄想)懇親会、の2部構成で進めてまいります。どうぞよろしくお願いします。

mirudakeartclub.hatenablog.com

横浜税関。エキゾチックなドームがとても印象的。館内展示は1階の一部のみ)

(1)「観るだけ美術部」部長からの連絡・報告

 寒くなりましたね。北海道は、とうとう雪が降り、一気に冬仕様となりました。2025年の秋は、あっという間だったなあ。紅葉もまともに見ないまま、枯れ葉となり、落葉してしまいました。義理の父親を連れて「北大の金葉祭」に行く、という目標も叶わなかったなあ。後述もしますが、ぼくにとっては2025年は、この年末に厳しい時期が来ると推測されます。自分は試されている、頑張らねば、という思いです。まだ、1年を振り返るには早いです。

横浜市開港記念会館。開港当時を描いたステンドグラスが素敵でした)

(2)(妄想)懇親会(半分、リアル!?)兼 関東オフ会 報告会
 さて。今回も(妄想)懇親会を進めていきましょう。今回のテーマは「関東オフ会 報告会」です。今回計画した「関東オフ会」には、部長、ぱんだぬき部員さま(^^♪、ryo部員さま(^^♪の3人が参加されました。2025年の「やりたいことリスト100」にも、「関東オフ会を成功させる」と挙げましたが、これもクリアーできました。ぱんだぬき部員さま(^^♪は快く会場を提供してくださり、パン作りの講師や、美味しいランチの提供などもしていただき、とてもお世話になりました。ryo部員さま(^^♪も、とてもお忙しいにも関わらず、時間を作ってくださり、たいへん感謝しております。

ホテルニューグランド。とうとう、ここまで来た!)

 前回の部会で、うちの奥さんが10月17日、スーパーマーケットで卒倒、失神、痙攣を起こして、救急車で搬送された話をさせていただきました。倒れたのは15時ころだったようです。救急車の車内で2度目の痙攣を起こし、心拍が停止、脈搏が不明瞭になったことから、救命救急士の判断で心臓マッサージが行われました。幸い、数分で心拍が戻り、そのまま循環器に強い総合病院に搬送され、真っ直ぐICUに入り、MRI、MRA、CTによる診断が行われました。近くにいた息子と義理の母親がその後到着、30分ほど遅れてぼくが職場から到着しました。その後、脳神経外科専門の病院に再搬送され、再びMRI、MRA、CTによる診断が行われ、最後にDrからの診察が行われました。診断の結果をぼくが聞くことができたのは、25時を過ぎていたと思います。

ホテルニューグランドが発祥の「シーフードドリア」ほんとうに上品なお味!)

 じつは、うちの奥さんが倒れたのは、これで3度目になります。1度目は4年前の1月、スーパーマーケットの駐車場で卒倒して緊急搬送されました。2度目は昨年9月。クルマの運転中に意識を失いました。クルマは道路わきの防護柵に接触し、減速しつつ、店舗に突っ込んだところで停止。このときも緊急搬送されました(大きな事故で、当日のテレビや、翌日の新聞にも載りました)。てんかんも疑われましたが、断定には至らず、運転免許の返納も求められなかったのですが、それから1年後の10月、今回の3度目の発症となりました。今回も再度てんかんを疑われ、脳波検査もかなり慎重に行われたのですが、やはり断定には至りませんでした。10月17日に発症、10月23日に退院しました。 そんななか、オフ会と称する旅行に、自分は出掛けてもいいのか、旅行の途中で何かあったらどうしよう、という気持ちもありました。でも奥さんが、楽しみにしていたのだからぜひ行ってきて、と背中を押してくれました・・。と、ここまでは前回部会でお話しした通りです。その後。この話には続きがあります。

mirudakeartclub.hatenablog.com

(オフ会。ぱんだぬき部員さま(^^♪が、いろいろ準備をしてくださいました)

 初日(11月1日)、新宿のホテルに泊まった朝、奥さんからLINEがありました。10月31日に循環器科のDrから「今回の発症は、おそらく心臓右心房冠動脈の機能不全が原因。確定されれば、12月にでも札幌のハートセンターで、開胸手術を実施して、心臓ペースメーカーを埋め込む施術が必要」と言われた、と書いてきました。もう、頭のなかが真っ白、目の前は真っ暗になりました。開胸手術ですから、何時間にも及ぶ大手術です。死んでしまうかもしれない・・。そう思うと、涙がぽろぽろ出てきて、止まりませんでした。

(出来上がった「ちゃっちゃかフォカッチャ」人生最高のフォカッチャかも!)

 ぱんだぬき部員さま(^^♪も、ryo部員さま(^^♪も、そして3日に会う予定だったCHIHIRO部員さま(^^♪も、皆さん「もし会いたいと思えないような気持ちだったら、無理する必要はないです」と言ってくれました。みんな優しいな、と思いました。でも、うちの奥さんは、前から楽しみにしていたことなのだから、ぜひ参加してほしい、と言ってくれたし、ぼくも誰かに話をすることで気持ちが少しでも楽になるなら、と思って、11月1日は横浜を観光、ホテルニューグランドに泊まり、2日に部会に向かうことにしました。

(ぱんだ好き部員さま(^^♪、ryo部員さま(^^♪の3人でオフ会が始まりました)

 オフ会は、ぱんだぬき部員さま(^^♪のパン教室で行われました。ぼくはJR大塚駅から歩いて行ったのですが、少し迷いながらも、無事に着くことができました。そのあと、ryo部員さま(^^♪も到着して、関東オフ会が始まりました。と言っても肩ひじ張らない、和やかな雰囲気のなかで、さあパン作りをはじめましょう!という感じで楽しい時間のスタートになりました。

(オフ会の様子。ぱんだぬき部員さま(^^♪のブログより無断借用)

 「ちゃっちゃかフォカッチャ」は、ぱんだぬき部員さま(^^♪の製法特許です。材料の混ぜ方などに工夫が凝らされていて、あっという間に出来上がりました(練る行程で、部長が呑み込みが悪くて。申し訳ありません!)。あとは焼き上がりを待ちながら、初めてお会いしたとは思えないほどの楽しい話で盛り上がりました。ぱんだぬき部員さま(^^♪も、ryo部員さま(^^♪も、とってもお話上手、聞き上手で、ケラケラ笑ったり、驚いたりしているうちに、焼き上がり。ぱんだぬき部員さま(^^♪がランチも用意してくれて、美味しい時間になりました。やっぱり、「ちゃっちゃかフォカッチャ」が美味しかったなあ。焼きたてというのもあるけど、ほんとうに美味しかったです。いままで食べたパンのなかでも最高に美味しかったです!

pandanukichen.hatenablog.com

 最後に、ぱんだぬき部員さま(^^♪の発案で、何か美術部らしいことをしようということで、多肉植物の寄せ植えをしました。ぱんだぬき部員さま(^^♪もryo部員さま(^^♪も、、多肉植物好きで、わいわい楽しく仕上げました。その寄せ植えは、ぱんだぬき部員さま(^^♪が育ててくれるそうです。次回、またオフ会が持てたら、寄せ植えを観に行きたいですね。

多肉植物の寄せ植え。うまく根付いてくれるかな?)

 名残惜しかったのですが、部長はryo部員さま(^^♪と一緒に、14時ころにパン教室を離れました。ryo部員さま(^^♪と一緒に、今回のもうひとつの目的であった上野、国立西洋美術館での「オルセー美術館展」を観るためです。印象派の展覧会は人気があるので、会場はものすごく鑑賞客が多かったです。それでも、ぼくはお目当てだったドガの作品や、大好きなルノワールの作品を観ることができて、大満足で築地の旅館に向かいました。

mirudakeartclub.hatenablog.com

 3日は、2日に予定が入っていてお会いできなかったCHIHIRO部員さま(^^♪と会うことができました。CHIHIRO部員さま(^^♪とも、初対面でした。部長の希望を聞いてくれ、ウチキパンで美味しそうなパンを買い、陶器のお店で可愛いマグカップを買い、元町のお洒落な洋館をめぐり、美味しいランチを食べて、大満足でした。

(えの木てい本店。東京裁判で弁護人を務めたウォーレンの旧邸。1927年(昭和2年)の建築)

 いちばんよかったのは「えの木てい 本店」です。開店すぐに行ったので、あまり待たなかったのですが、あとから長い行列ができていました。そこで食べたケーキが美味しかったな。CHIHIRO部員さま(^^♪にも、部長の愚痴をいろいろと聞いてもらい、気持ちが軽くなりました。最後は、羽田空港行きの列車にまで乗せてくれました。一緒に歩くときの案内がとてもお上手で、まるでコンシェルジュのようでした。

(えの木てい本店でいただいたケーキセット。内装も外観も、ケーキも素敵でした)

 今回、部員の皆さまとお会いできたのは、ぼくにとってとても大きなきっかけになりました。2025年当初、この企画をしたときは、この時期にまさか自分がこのような状況に置かれているというのは想像すらできていませんでしたが、話を聞いてもらって、気持ちが少し軽くなりました。そして、自分は幸運なんだ、よし明日から頑張ろう、という気持ちになることができました。ぱんだぬき部員さま(^^♪、ryo部員さま(^^♪、CHIHIRO部員さま(^^♪には、ほんとうに感謝しております。

www.rintosite.com

 ブログって、ネット上の薄っぺらい繋がりですけど、でもここで繋がった「縁」というのは、ほんとうに貴重だなあって思っています。ぼくのなかでは、皆さんは「リアルな友だち」です。これからも、末永いお付き合いをよろしくお願いします。

(CHIHIRO部員さま(^^♪と。CHIHIRO部員さま(^^♪ブログより無断借用)

 今回は、関東オフ会ということで、遠かったり、都合がつかなかったりして、お会いできなかった部員さんも多くいらっしゃいました。またどこかで、こういう繋がりを持ちたいな、という気持ちを強く持った「観るだけ美術部長」でした。皆さんに感謝いたします。

港の見える丘公園。横浜は素敵な街だな。大好きになりました)

 じつは、最初にも触れましたが、11月、12月は、部長にとって、まだまだ試練が待ち構えています。まず、奥さんが12月に、開胸手術をして、心臓ペースメーカーを埋めることになると思います。でも、奥さんや息子の手前もあり、自分は「フリ」でも強がっていないといけないですよね。自分にはそれに耐え得るメンタルが残っているのか、メンタルが決壊しないか・・。とても不安です。

 もうひとつ。義理の父親が、いまがんを患っており、年は越せなさそうと言われています。11月、12月は、自分は試されていると痛感しています。あまり「頑張る」という言葉は好きではない部長ですが、ここは「頑張る」ことを必要とされていると思います。頑張ります。

 

 これで第170回「観るだけ美術部」部会(11月部会)を終わります。次回の部会は12月。なんと、師走です。2025年最後の部会となります(ほんとかよ?)。テーマは「2025年 やってみたいことリスト100 答え合わせ」です。お楽しみに!!

 

★「観るだけ美術部」部員id★

★「観るだけ美術部」部長(室蘭本部)(id:mirudakeartclub)

★ちゃき 部員(札幌支部)(id:ku3re5)

★うみ 部員(道南函館支部)(id:uminekobiyori)

★ジェイド 部員(茨城取手支部)(id:JadeSeele)

★袴ブーツ 部員(千葉支部)(id:hakama-boots.com/ )

★ryo 部員(東京品川支部)(id:ryokuminima)

★ぱんだぬき 部員(厚木支部)(id:pandanukichen)

★CHIHIRO 部員(藤沢支部)(id:hi2sug)

★こっぺ 部員(湘南支部)(id:shiawasenoyokann)

★ジロー 部員(伊丹支部)(id:surrealsight)

★Miyukey 部員(愛媛支部)(id:Miyukey

★ぴーちゃん 部員(福岡支部)(id:gracedusoleil2525)

★くまこ 部員(北九州市支部)(id:jibun_iyashi)

★こゆ 部員(熊本支部)(id:koyux)

★クランマニス 部員(マレーシア/クアラルンプール支部)(id:kurangmanis)

★トラリブ 部員(スロヴァキア/ブラチスラバ地区)(id:tra_live)

★ももベル 部員(ドイツ/ベルリン支部)(id:momobellblog)

★DIT井上 部員(カナダ/アルバータ支部)(id:ditinoue)

 

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 追伸。今後、「観るだけ美術部」の部会記事に真っ直ぐ行きたい皆さんは、タグから「観るだけ美術部」にお越しください。どーんと「観るだけ美術部」の記事に飛べますよ。

[道外展]★オルセー美術館所蔵 印象派 室内をめぐる物語展

オルセー美術館所蔵 印象派 室内をめぐる物語展)

オルセー美術館所蔵 印象派 室内をめぐる物語展

 東京/国立西洋美術館、2025年10月25日(土)-2026年2月15日(日)

(WEBサイト→)

www.nmwa.go.jp

www.orsay2025.jp

 印象派といえば、移ろう光や大気と共にとらえた戸外の風景がまず思い浮かぶのではないでしょうか。とはいえ、彼らの最初のグループ展が開かれたのは、近代化が急速に進む1870年代のパリ。この活気に満ちた大都市や、その近郊における現在生活の情景を好んで画題とした印象派の画家たちは、室内を舞台とする作品も多く手がけました。

エドガー・ドガ『室内の肖像 ペレッリ家』、1858-1869年、オルセー美術館

 とりわけ、生粋のパリ市民であったエドガー・ドガは、鋭い人間観察に基づいた、心理劇の一場面のような室内画に本領を発揮し、いっぽうでピエール=オーギュスト・ルノワールは、穏やかな光と親密な雰囲気をたたえた室内情景を多数描きました。ほかにも、エドヴァール・マネや、クロード・モネ、ギュスターヴ・カイユボットらが、私邸の室内の壁面装飾を目的として制作された作品も少なくありません。印象派と室内は、思いのほか深い関係を結んでいたのです。

 本展では、「印象派の殿堂」とまで言われるパリ・オルセー美術館所蔵の傑作およそ70点を中心に、国内外の重要作品を加えたおよそ100点により、室内をめぐる印象派の画家たちの関心の在りかや表現上の挑戦をたどります。

ピエール=オーギュスト・ルノワール『ピアノを弾く少女たち』、1892年、オルセー美術館

 オルセー美術館印象派コレクションがこの規模で来日するのは、およそ10年ぶり。さらに今回、若きドガの才気みなぎる代表作『室内の肖像 ベレッリ家』が日本で初めて展示されます。マネ、モネ、ルノワールポール・セザンヌらの名品も一堂に会するこの機会に、室内というテーマを通して印象派のもうひとつの魅力をぜひご堪能ください。

フレデリック・バジール『バジールのアトリエ ラ・コンダミンヌ通り』、1870年、オルセー美術館

 19世紀のサロン(官展)や美術市場を席巻した肖像画は、印象派にとっても重要な表現手段となりました。彼らにとってこの絵画ジャンルは、人物を日常的な環境のなかに描き出し、その人となりや社会的な属性を表す試みでもありました。アトリエを筆頭に、画家や文筆家の創作の場を舞台とする仲間うちの肖像画では、交友関係や芸術理念を示唆する道具立てが随所に認められます。いっぽう、より公的な肖像画の場合、当世風の衣装や上質な家具調度品の巧みな描写によって、室内はモデルの「佳き趣味」や社会的ステータスの表明にうってつけの空間となります。さらに家族を描いた集団肖像画に目を向けるなら、家庭を満たす親愛の情だけでなく、心理的なドラマまで垣間見ることができるでしょう。それらには子供を中心に据える近代的な家庭観も表れています。ときに風俗画との境を曖昧にしながら、同時代の人々を生活空間のうちに描くこうした肖像画は、印象派が志向する「現代性(モデルニテ)」のテーマに深くかかわる絵画ジャンルだったのです。

ピエール=オーギュスト・ルノワール『読書する少女』、1874-1876年、オルセー美術館

 身の回りの暮らしに画題を求めた印象派の画家たちは、家族や仲間うちでの奏楽会、あるいは読書、針仕事といった、家庭での楽しみや息抜き、手すさびの情景をしばしば描きとめました。そこで彼らの人間関係が示されるほか、外界から守られた室内特有のくつろぎや、部屋を満たす音楽を視覚的に喚起させる造形表現が見られます。こうした安逸な家庭環境を主に担ったのは女性たちでした。当時、公共空間を闊歩する男性とは対照的に、私的室内が女性の領域とみなされていたのです。よりいっそう外部から遮閉された室内の最奥部に足を踏み入れたならば、ここでも女性が身繕いをし、あるいは寝台に横たわる姿を目にすることでしょう。印象派の画家たちは、神話や歴史的なコンテクストを剝ぎ取った私室を舞台に、ときに伝統的なヌード表現に範をとり、ときにアカデミックな理想化を排して生身の肉体に迫ることで、新しい裸婦環境への挑戦を繰り広げました。

(アルベール・バルトロメ『温室の中で』、1881年ごろ、オルセー美術館

 戸外で自然と向き合い、移ろう光や大気を研究した印象派。その自然や光への関心は、彼らが作品のなかで巧妙に戸外の風景や外光を室内に挿入し、ときに両者を浸透させていることと無縁ではないでしょう。画家たちは室内空間の延長にして周縁にあるバルコニーやテラス、あるいは温室といった、室内(内部)と戸外(外部)のあわいを少なからず絵画の舞台に選んでいます。特にガラス温室は、19世紀に都市部で人気を博し、やがてブルジョワたちの邸宅にも設置されて、室内装飾の一部になりました。技術的に最先端の「インテリア」が温室であるならば、画家たちは生計を立てるためにも、この需要の尽きないジャンルにも取り組みました。そして印象派世代を巻き込んで展開したジャポニズムもまた、自然を最大の着想点として、斬新な装飾美術を生み出すことになります。

クロード・モネ『睡蓮』、1916年、国立西洋美術館(松方コレクション))

 印象派による室内への自然の取り込みは、壁面装飾のかたちで新しい芸術様式を生み出すことになります。それが行き着く先に、オランジュリー美術館(パリ)の「睡蓮の間」に結実する、モネによる『睡蓮』の大画面が四方を取り囲む瞑想的な空間の創出があると言えるでしょう。19世紀後半には絵画や彫刻を筆頭とした「大芸術」と、それまで下位とみなされていた装飾芸術との区別が大きく揺らぎ、室内装飾に対する画家たちの関心が高まりました。印象派の画家たちも例にもれず、様ざまな経緯や目的のもと、居住者の生活空間に精彩を添える装飾画を制作し、また室内装飾用のオブジェを手掛ける者もいました。世紀転換期からモネが着手する睡蓮の池をモティーフとした作品群は、やがて水面に覆われた巨大な絵画パネルによって観る者を囲うことで、室内ならではの自然没入を可能にしました。室内装飾を介して自然と室内は究極的に浸透しあうことになり、ここで印象派と室内をめぐる物語もまたクライマックスを迎えます。

(ギュスターヴ・カイユボット『ヒナギクの花壇』、1893年ごろ、ジヴェルニー印象派美術館)

※なお、こちらの掲載画像は、当ブログが独自に定めるガイドラインに基づき、国立西洋美術館さま(HP)、および「オルセー美術館収蔵 印象派 室内をめぐる物語展」公式HPさまよりお借りしました。

 

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[企画展]★山田秀三とアイヌ語地名を歩く 小樽 クローズアップ展示4

(クローズアップ展示4)

山田秀三アイヌ語地名を歩く 小樽 クローズアップ展示4

 北海道博物館、2025年8月8日(金)-12月17日(水)

(WEBサイト→)

www.hm.pref.hokkaido.lg.jp

 アイヌ語地名研究の第一人者であった山田秀三(1899年-1992年)が、小樽市街地や、その周辺の地名について調査の記録をまとめたノートなどをご紹介します。

 

※なお、こちらの掲載画像は、当ブログが独自に定めるガイドラインに基づき、北海道博物館さま(HP)よりお借りしました。

 

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[企画展]★美術は何を記憶しているか 1945-2025 近美コレクション展

神田日勝『室内風景』、1970年、北海道立近代美術館

★美術は何を記憶しているか 1945-2025 近美コレクション展

 北海道立近代美術館、2025年7月19日(金)-11月24日(月・振)

(WEBサイト→)

artmuseum.pref.hokkaido.lg.jp

 2025年、太平洋戦争の終結から80年を迎えました。この80年間で、北海道を含む日本の社会は大きく変化し、その過程で様ざまな美術作品が生み出されてきました。作家の生きた時代の世相を反映したもの、長年心に残り続けていた情景が昇華されてかたちとなったものなど、美術は時代ごとの思潮や事象をいわば記憶として宿しています。

(国松登『眼のない魚』、北海道立近代美術館

 本展では、社会と関わりながら制作されてきた美術作品の背後に存在する記憶を、現代に生きる私たちの眼を通して紐解きます。絵画や彫刻、写真など多様な作品により社会と美術、そして過去と現在とのつながりを様ざまな角度から検証するとともに、私たちの現在地を見つめなおす契機とします。

 

※なお、こちらの掲載画像は、当ブログが独自に定めるガイドラインに基づき、北海道立近代美術館さま(HP)よりお借りしました。

 

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[講演会]★五十嵐聡美「キュレータートーク アイヌの美 彩りと輝き展」

アイヌの美 彩りと輝き展)

★五十嵐聡美「キュレータートーク アイヌの美 彩りと輝き展」

 北海道立釧路芸術館、2025年11月15日(土)14:00

(WEBサイト→)

www.kushiro-artmu.jp

 アイヌ民族は北海道、樺太南部、千島列島をおもな活動圏として、周囲の民族と交易や交流を行うなかで独自の文化を発展させました。本展では「彩りと輝き」をキーワードに、装飾性豊かな衣類や装身具、ゴザ、木に金属や鹿角などを組み合わせた儀礼用太刀、儀礼用矢筒、煙草入れなどをご紹介いたします。

(下倉洋之『熊の手リング』)

※なお、こちらの掲載画像は、当ブログが独自に定めるガイドラインに基づき、北海道立釧路芸術館さま(HP)よりお借りしました。

(貝沢徹『イタ(木製の盆)』)

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[特別展]★かがくいひろし 日本中の子どもたちを笑顔にした絵本作家展

(かがくいひろしの世界展)

★かがくいひろし 日本中の子どもたちを笑顔にした絵本作家展

 北海道立旭川美術館、2025年9月13日(土)-11月24日(月・祝)

(webサイト→)

artmuseum.pref.hokkaido.lg.jp

kagakuihiroshi.com

 刊行からわずか16年で、累計発行部数1000万部を越える金字塔を打ち立てた絵本『だるまさん』シリーズ。作者、かがくいひろしは50歳にして遅咲きの絵本デビューを果たすや、驚異的なスピードで16作品を次々と描き上げ、54歳でこの世を去りました。その間、わずか4年。

(かがくいひろし『だるまさんが』)

 まさに彗星のごとく絵本界を駆け抜けた作家でしたが、じつは彼が特別支援教育のベテラン教員であったこと、『だるまさんが』をはじめとする絵本が、障害児教育の現場経験から生み出されたものであることはあまり知られていません。没後初めて彼の軌跡を振り返る本展では、絵本原画やアイディアノートとともに、教員時代に手掛けた教材や人形劇の貴重な記録を紐解き、いまこの瞬間にも日本中の子どもたちを笑顔にし続けているかがくい絵本のルーツに迫ります。

(かがくいひろし『おもちのきもち』)

※なお、こちらの掲載画像は、当ブログが独自に定めるガイドラインに基づき、北海道立旭川美術館さま(HP)よりお借りしました。

 

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