「観るだけ美術部」部長のブログ

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[建築物]★生駒ビルヂング(大阪市)

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(生駒ビルヂング。1930年(昭和5年)建築。大大阪時代を象徴する近代建築です)

★生駒ビルヂング(=生駒時計店、大阪市
(WEBサイト→)https://www.t4bk.com/history.html(生駒ビルヂング公式HP)

 地下鉄堺筋線、または京阪電鉄北浜駅から徒歩2分。野村ビルを過ぎて平野町通りとまじわる交差点の角地に建つ時計塔を持った重厚な建物が、今回紹介する「生駒ビルヂング」本社ビルです。レトロなビルが並ぶこの周辺の中でも、ひときわ目を引く存在であると同時に、大大阪時代を代表する近代名建築のひとつでもあります。
 鉄筋コンクリート造りで、地上5階、地下1階。時計塔が一部6階部分となっています。1930年(昭和5年)の建築で、設計は堺筋難波橋柴島浄水場などを手掛けた大阪建築界の重鎮、宗 兵蔵。原案は大倉三郎、実施設計は脇永一雄(宗建築事務所)。施工は大林組。外壁にスクラッチタイル(手掻きの縦じま模様のタイル)、屋上周りの装飾と各階の窓の上下のラインにはテラコッタ(素焼きの陶片)を用いたアールデコ様式の中層商業ビルです。屋上の時計塔と出窓(3-5階部分)、丸窓(2階部分)が、巨大な振り子時計のデザインになっています。窓の上下に縁をとり水平線を強調しつつ、バルコニーや出窓のデザインも秀逸で、時代の特徴がよく表れています。現在は、外部・内部とも改修され、コンシェルジュ・オフィスとなっており、映画やCMの撮影にも使われているそうです。営業時間内であれば、内部見学も可能だそうです。登録有形文化財

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(装飾板上部に置かれた「駒型に生」の商標マークが心憎い)

 東北側ファザードの屋上から3階にかけて縦に取り付けられた装飾板(彫刻風である)は、ビルを特徴づける装飾として当ビルの趣きを一層深いものにしていますが、その設置意図はわかっていないようです。その最上部に取り付けられた「駒型に生」の商標マークは、戦時中に同地金供出のため取り外されたままになっていましたが、1983年(昭和58年)の改修に当たり復元されたもので、縦55cm、横43cmのものです。

 生駒商店の発祥は定かではありませんが、一説によると、元来は袋物や小物の取引を江戸時代後半から始めたらしく、その後1870年(明治3年)に、大阪屋権八という人物が生駒商店を引き継ぎ、「大権堂・生駒商店」として、中央区今橋(現在の淀屋橋筋西側)に移して開店したのが始まりのようです。店舗は、昭和初期の御堂筋・淀屋橋筋の拡張に伴って、現在の北浜(堺筋平野町西南角)に再度移転し、1930年(昭和5年)に当時の金額で15万円をかけて「生駒ビルヂング」の建設を行いました。1945年(昭和20年)3月の大阪大空襲により、周辺は焦土となりましたが、当ビルディングは堅牢なコンクリート壁と各開口部の防火扉が機能して、戦災を免れたそうです。その後、1983年(昭和58年)に外壁のテラコッタの一部が落下したことを契機に、外壁剥離防止および鉄製窓枠をすべてアルミサッシに替える大改修を行っています。平成7年の阪神淡路大震災の際も、隣接するビルの大半が破損する中、直径6寸5分の松丸太を493本基礎杭として打ち込んだ工法のおかげで、ほとんど被害がなく現在に至っています。

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(入口上部およびショーウィンドウ上部に置かれた御影石の「鷹」の彫刻)

 入口上部の2か所とショーウィンドウ上部の5か所、計7か所に置かれた御影石の「鷹」の彫刻は、設計段階では「フクロウ」であったそうです。しかし、欧米では知恵の象徴と「フクロウ」も、往時の日本では夜の鳥として暗いイメージが先行していたため、「鷲」に変更されたと伝えられてきました。最近になって「フクロウ」のデザインの入った設計図が発見され、当時の言い伝えが裏付けられています。入口正面のイタリア産大理石を使った階段やステンドグラスも素晴らしいです。

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(建物の価値をより一層高めてくれている「時計塔」)
 
 屋上の時計塔を堺筋側から見上げると、5階から3階にかけて縦に長く出窓が配置されており、その下の2階部分に丸窓が置かれています。これは、時計の振り子をデザインしたものだそうです。しかし最近は街路樹が繁茂していることが多く、冬季落葉時に交差点東北角から眺めないとよく判別できないらしいです(しかし訪問時は、街路樹は切り払われたようでしたが、どうなのでしょうね)。

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(映画やCMの撮影に使われるほか、コンシェルジュルームとしても使われています)

※なお、こちらの掲載画像は、当ブログが独自に定めるガイドラインに基づき、ブログ運営者がみずから撮影したものです。

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