「観るだけ美術部」部長のブログ

「観るだけ美術部」勝手に部長です。入部希望者は、コメント欄にメッセージを残してください。折り返し、勧誘に伺います(笑)。

あしたはきょうより、きっといい日。

[建築物]★旧大林組本社ビル(大阪市)

イメージ 1
(旧大林組本社ビル。1926年の建築)

★旧大林組本社ビル(大阪市
 今回紹介する建物は、日本が誇る五大ゼネコンのひとつ大林組の本社ビルです。土木建築請負業「大林組」は、2010年(平成22年)の東京移転まで長らく大阪を拠点としていました。このビルは創業から数えて4代目の本社屋となり、ビルのすぐ南側に建つ「大坂大林ビルディング」が1973年(昭和48年)に完成するまでの約半世紀にわたって本店として機能してきました。その後は1981年(昭和56年)より辻学園の校舎として利用され、2006年(平成18年)には大規模改修が行われ、2007年(平成19年)に「ルポンドシエルビル」と名称を変えて現在に至ります。

イメージ 2
(3連アーチ上部にはバルコニーが付いています。1926年(大正15年)の建築)

 画像は南側、土佐堀通からの長めです。北側(土佐堀川側)とは地上階部分を除いてほとんど同じで、川と通りの双方に向けた両面性が特徴となっています。中央には各階の窓を囲む3連アーチと、各階に貼られた内側には、鷲の模様が彫られたテラコッタ彫刻、そのアーチの真上には力強い造形をしたバルコニー。非装飾左右対称の合理主義的な雰囲気を持たせながら、装飾的な要素を中央に集めるという整合されたメリハリをつけたデザインが秀逸です。外壁には前面に茶色のスクラッチタイルを貼り、腰壁には龍山石を使用した、贅沢で重厚な外観です。

イメージ 3
(正面玄関。白いアーチ部分上部には社章、左右に一対の鷲を配置)

 竣工は1926年(大正15年)で、左右上部にある円型テラコッタには『紀元1926年』とラテン語で表記されています。入口上部のアーチに鎮座した左右一対の鷲の彫刻も見応えがあります。3階にはミシュラン1つ★のレストランがあります。同3階には「大林組歴史館」が入居しており、平日には無料で大林組の歴史を学ぶことができます。
 「歴史館」へ向かうエレベーターホールは改修されて綺麗になりましたが、当時のレトロ感を継承した空間に仕上がっています。ねじれ支柱や階段手摺り、踏み面など、当時のものを再利用したデザインも多く見受けられ、どこをどのように改修したのか興味があります。エレベーターも改修されていますが、左右に鳥が飛ぶインジケーター部分の彫刻は見事です。

イメージ 4
(6階部分の窓枠だけが半円アーチ型をしており、垂直方向が強調された印象です)

 旧本店の設計では、小田島兵吉の平面計画に基づいた社内コンペが実施され、当時アメリカで流行したスパニッシュ・ミッション様式の意匠を持つ平松英彦の案が採用されました。平松英彦は、京都帝国大学建築学科時代には武田五一が教鞭をとっており、「京都大学人文科学研究所」に代表されるスパニッシュ様式に少なからず影響されていたようです。昔は当ビルの周辺に高い建物は一切なかったようで、同地区のランドマークとして親しまれたようです。2006年(平成18年)大林組はこの旧本店ビルを歴史的な建物として保存していく方針を固め、2007年には耐震補強が施されました。中之島を代表する近代建築として、今後も残ってほしいものです。(2019年2月、現状を確認)

※なお、こちらの掲載画像は、当ブログが独自に定めるガイドラインに基づき、ブログ運営者がみずから撮影したものです。

↓いつも足しげく訪問していただき、ありがとうございます。きょうも1クリック、よろしくおねがいします。





あしたはきょうよりもっといい日。