★室０号 航空機用エンジン（日本製鋼所室蘭製作所）
室０号（むろれいごう）とは、日本最初の国産航空機用エンジンのことです。大日本帝国陸軍（以下陸軍）初の航空発動機である「陸軍六年型百馬力」の試作第一号機であり、日本製鋼所室蘭工業所（現在の日本製鋼所室蘭製作所、創業は１９０７年（明治４０年））で製造されました。室０号は、日本製鋼所室蘭工業所（現在の日本製鋼所室蘭製作所）にてドイツのメルセデス・ダイムラー・ベンツ社製Ｅ６F型発動機（水冷直列６気筒、水冷直列プロペラ直結型、１００馬力）を、陸軍のスケッチを元に改良、製造したものです。当時の技術力をすべて注いだ製作機で、日本の技術力の高さの証左と言えるでしょう。
１９１７年（大正６年）１２月、陸軍東京砲兵工廠は日本製鋼所と東京瓦斯電氣工業の２社に飛行機発動機を試作発注しました。日本製鋼所では松田義一、宮田応礼を中心に試作が行われ、１９１８年（大正７年）１２月２１日完成しました。
電動機による摺り合せを済ませた後、１２月２３日にプロペラリアクションとスラストを計測できる運転試験台に搭載されました。ところが、その日は零下７度の気温のために起動不成功に終わりました。翌１２月２４日、シェル社の良質ガソリンを用い，また気化器の水套（冷却水路）に仮設ボイラーの温水を還流させ、起動に成功しました。１時間後に３番シリンダが焼き付いたため、全部の遊隙（クリアランス）を修正しました。翌１２月２５日、公式第一次領収運転に倣った連続４時間の試運転が行なわれ、つつがなく終了します。分解検査ではシリンダに損耗などは一切認められず、良好な成績であったそうです。
「陸軍六式（六年型）百馬力」は日本製鋼所では室０号を含め２１基が製造されましたが、前半の１０基はそれぞれ当時２，０００円の赤字となり、後半の１０基についても製造コストがかさんだため、１９２１年（大正１０年）航空機用エンジンの生産から撤退しました。なお、この発動機で培った製造技術は戦車用発動機などに転用されました。室０号はしばらくの間、室蘭に保存されていましたが、１９３９年（昭和１４年）に武蔵製作所（旧日本製鋼所東京製作所）で戦車用発動機を生産する際に譲渡され、長い間所在がはっきりしませんでした。１９７７年（昭和５２年）に室蘭製作所の社内報での紹介がきっかけとなり、東京製作所から室蘭製作所へ里帰りすることになりました。
里帰りした室０号はほぼバラバラの状態でしたが、１９７９年（昭和５４年）にほぼ復元され、現在は日本製鋼所室蘭製作所に保存されています。「観るだけ美術部」部長は日本製鋼所室蘭製作所の旧発電所を見学した際、研修棟玄関に常設展示されている実物を観ることができました。１９９９年（平成１１年）室蘭市文化財指定。（２０１７年７月、現状を確認）（文章はＷｉｋｉｐｅｄｉａを参考にさせていただきました）
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