「観るだけ美術部」部長のブログ

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[旅行案内]★バイヨン寺院(アンコール・トム1)(カンボジア・8)

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 バイヨン寺院は、都城アンコール・トムの中心に位置しています。その都城における位置や、周壁を持たないことからも、バイヨン寺院が特別な存在であることがわかります。12世紀後半から13世紀にかけて、ジャヤヴァルマン7世からジャヤヴァルマン8世に至る3人の王の在位中に建設され、改変と増築が重ねられました。四面に人面(観世音菩薩といわれる)のある塔堂が特徴的なその建築様式(バイヨン様式)は、ジャヤヴァルマン7世によって建てられたタ・プローム、プレア・カン、バンテアイ・チュマール、アンコール・トム、ネアック・ポアン、タ・ソムなど、多くの寺院に共通して見られる様式です。
 
 
 バイヨン寺院は、アンコール王朝の中興の祖と言われるジャヤヴァルマン7世が、チャンパ(古代ヴェトナム)に対する戦勝を記念して、12世紀末ごろから造成に着手したと考えられています。石の積み方や、材質が違うことなどから、多くの王によって徐々に建設されていったものであると推測されています。当初は、大乗仏教の寺院でしたが、後に、アンコール王朝にヒンドゥー教流入すると、寺院全体がヒンドゥー化したようです。これは、建造物部分に仏像を取り除こうとした形跡があることや、ヒンドゥーの神像があることなどからも推測できます。1933年に、フランス極東学院の調査によって、中央祠堂からブッダの像が発見されたのは有名。
 
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 バイヨン寺院を特徴付けているのは、中央祠堂をはじめ、塔の4面に彫られている人面像(バイヨンの四面像)です。人面像は、観世菩薩像を模しているというのが一般的な説です。しかし、戦士をあらわす葉飾り付きの冠を被っていることから、ジャヤヴァルマン7世を神格化して偶像化したものであるとする説も存在する。この像は「クメールの微笑み」と呼ばれています。
 
 全体的な構造としては、基本的には二重の回廊と、その中心に位置する高さ43mの中央祠堂から構成されます(全体として、おおむね3層から構成されています)が、増改築が行なわれたために複雑な構造になっています。他のアンコール遺跡に残るクメール建築と同じく、疑似アーチ構造を多用した建築構造をもっています。50近い塔に合わせて、117個の人面像が残されています(異説あり)。人面像の高さは、1.7-2.2m程度で、個々にばらつきがあります。
 
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 第一回廊(第1層)には、 東西南北の全方向に門があります。中でも、東門(正門に当たる)の近くには、両側に(聖)池のあるテラスがあります。ここから振り返って東を見ると、未舗装の直線道路が続いているのが見えますが、この道は、死者の門へと続くアンコール・トム内の幹線道路のひとつでもあります。第一回廊にもレリーフが残っています。アンコール・ワットにも存在する「乳海攪拌」のレリーフなどですが、保存状態は、あまりよいとは言えません。
 
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 第二回廊(第2層)は、約160m×120m。正面は、東側を向いています。現在残るレリーフは、他のアンコール遺跡とは大きく異なった特徴を持ちます。第二回廊には、チャンパ(古代ヴェトナム)との戦争の様子や、バイヨン寺院建設当時の市場の様子や、狩りの様子などがレリーフに彫り込まれており、庶民の暮らしを窺い知ることのできる貴重な資料。第二回廊の上部には、中央祠堂と、その周囲に配置された16の塔堂を巡るテラスがあります。どのテラスにも前述の観音菩薩と思われる四面像が彫られています。第2層の回廊にはヒンドゥー教色の強いレリーフがデザインされています。
 バイヨン寺院は、なかなか複雑な構造になっているので、できれば平面図を手に歩きたいものです。構造が複雑なのは、時代時代に設計が変更され追加されたからで、下から上部の周回テラスに上る途中に、その痕跡を見ることができます。
 
 中央祠堂(第3層) は、テラスとなっており、やはりどの塔にも観音菩薩とおぼしき四面像が彫られています。第3層の中央には、過去にシヴァリンガが置かれていましたが、後世の人が除去したため、現在では、小乗仏教の像が置かれています。
 
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 バイヨンの魅力は、何と言っても、岩山のような圧倒的な量感にあります。アンコール・トム南大門をくぐってアンコール・トム内部の深い森の中を走り、その先にバイヨンの黒々とした姿が見えてくる瞬間は、なかなかドラマチック。その複雑なかたちは、古代の生物をも思わせます。外側回廊の壁面に刻まれた浮き彫りと、多数の観世音菩薩とされる顔を刻んだ人面塔は、どちらもすばらしい芸術作品です。アンコール・ワットがシャープな線で構成された肉薄の作品であるとするならば、バイヨンは手書きの線で構成された肉厚の作品のようです。
 
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