「観るだけ美術部」部長のブログ

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[建築物][常設展]★横浜税関本館庁舎(横浜市にて現存)

横浜税関本館庁舎。港町ヨコハマを代表する建築物です)

横浜税関本館庁舎(横浜市にて現存)

 港町ヨコハマを代表するシンボリックな建物です。「キング」と呼ばれる神奈川県庁本庁舎(1928年、高さ49m)、「ジャック」(1917年、高さ36m)と呼ばれる横浜市開港記念会館と並び「クイーン」(1934年、51m)と呼ばれるのが、この横浜税関本館庁舎です。「キング」や「ジャック」と並び、横浜3塔のひとつでもあり、横浜港のシンボルでもあります。

横浜税関の建築は1934年(昭和9年)。銅板葺きのドームがお洒落)

 建物の建築は1934年(昭和9年)。かつては外国船の船長が横浜港に入港する際に、まずは税関を訪問する慣習になっていたので、税関庁舎にはそれ相応の格式が求められました。しかし、当時はまさに大恐慌の真っただ中というタイミングでもあり、横浜税関は仮設の建物しかたっておりませんでした。そこで当時の大蔵大臣であった高橋是清が「失業者対策」として横浜税関の庁者建築を推進。それを受けた第22代税関長、金子隆三(かねこたかぞう)の指示により、低予算での庁舎建築が行われたそうです。設計は大蔵省営繕管財局。吉武東里(よしたけとうり)や下元連(しももとれん)を中心に省内でまとめられました。吉武東里は大蔵省で数多くの建築設計に携わっており、なかでも国会議事堂は省内でも優れた技術を持つ吉武東里のデザインともいわれています。また下元連は、現存する総理大臣公邸(総理大臣官邸の隣にある建物)を設計。のちに工学院大学の教授も務めています。

(ドームの高さは51m。県庁の望楼に高さに負けないため、無理やり高くしたとか)

 吉武東里はもともと、青銅製のドームがない塔を設計していたそうです。ところが、その高さが県庁の塔より2m低かったことから、税関長の金子隆三が「国の機関である税関が、県の機関である県庁よりも低いとは何事か」と叱咤したらしく、その後吉武東里は計画を変更。5階の一部を設計から削り、その分の予算で塔の上にドームを付加して、県庁を超える高さ「51m」にしたそうです。なんとも言えないエピソードですが、このドームのおかげで、堅苦しい税関のイメージが薄らぎ、美しく気品ある雰囲気が生まれました。このドームがなかったら「クイーン」のイメージも変わったものになっていたことでしょうね。ちなみに、1961年に横浜マリンタワー(106m)ができるまでは、横浜税関の塔は横浜港でいちばん高い建物だったそうです。

 この建物で最も印象的なのが、クイーンの塔。塔最頂部は八角形。ドーム部分は天井ボードに覆われています。戴冠するドームはイスラム寺院様式で、半球体をやや上部に引き延ばしたような形状。県庁よりも高くしようという意識がここでも表れているのかも。銅板により青銅色になっており、全体がベージュ色の磁器質タイルの建物にあって唯一のアクセントカラーにもなっています。

(銅板葺きのイスラム寺院様式ドームが何とも素敵)

 正面玄関にある「横浜税関」の文字は、高橋是清が書いたもの。隣のプレートは、GHQ接収時に横長に架け替えられたもので、横型の跡がうっすらと残っています。外壁の上部には、パルメット(棕櫚、シュロ)とハニーサックル(忍冬、スイカズラ)を象った波型の棟飾り。イスラム様式のドームをいただいた塔と、温かみのあるベージュの外壁色、歩道に植えられた大きなパルメット(棕櫚)と相まって、どこかエキゾチックな印象を受けます。アーチや装飾がロマネスク様式(ローマの古典スタイル)の典型である正面玄関には、いちばん上にある窓上部に半円形のアクセントが見られます。正面玄関を入ると、落ち着いた空間が広がります。羅針盤を思わせるクロス(十字)型の意匠は、様ざまな場所に配されています。室内の灯り自体はガス灯から電気に代わっていますが、照明器自体は創建当時のもの。床面には凝ったモザイク。まず真鍮の枠を敷き、その間に石を嵌め込んでいます。

(じつはこちらが正面玄関。中央右側にある柱「横浜税関」の文字は高橋是清

 旧貴賓室、控室、税関長応接室、税関長室の4室があり、通常は見学不可。旧貴賓室は現在、会議や記者会見が行われる部屋。こちらの床面はカーペット時期の周りをぐるりとフローリングが囲んでいます。格式はあるけれど、重すぎない上品な内装です。隣室が控室。貴賓室より抑え目ながら、こちらも格式のある内装です。控室のさきにあるのが、税関長応接室。こちらの床面も、中心がカーペット敷きで周りがフローリング。ただしこちらのフローリングは、色の違う角材をモザイク状にしたもの。税関長応接室から進むと、税関長室。こちらの床面もモザイク状。GHQに接収された際には、マッカーサー元帥の執務室になった部屋です。隅に置いてあるわき机は、マッカーサー元帥が実際に使用していたものだそうです。(2025年11月、現状を確認)

 

▢なお、こちらの掲載画像は、当ブログが独自に定めるガイドラインに基づき、ブログ運営者がみずから撮影したものです。

 

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