「観るだけ美術部」部長のブログ

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あしたはきょうより、きっといい日。

[建築物]★上川倉庫(株)事務所(蔵囲夢、旭川市)

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(上川倉庫(株)事務所。1913年(大正2年)の建築)

★上川倉庫(株)事務所(蔵囲夢、旭川市

 こちらの建物は、旭川市に陸軍第七師団が配備されたころの遺産です。当時旭川市は、道北の開拓に伴う多くの穀物、資材の集積する物流拠点基地でもありました。こちらの建物は、その物流を担うため、旭川駅に近接して建てられた上川倉庫(株)を統括する事務所棟でした。上川倉庫(株)の創立は明治30年代で、おもに穀物を保管しており、1890年(明治23年)の旭川村開村から10年あまりのあいだに建てられています。最盛期の大正初期には21棟もの倉庫を所有し、昭和40年ごろまでその機能を十分に発揮していました。

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(観るだけ美術部長は、2020年10月に訪問しました)

 現在では、8棟の煉瓦造り倉庫が、中央の最大の棟を取り囲むようにして建ち。ひとつの街区を構成しています。そして、市内で最も古い宮下通りに面して、今回紹介する木造2階建ての事務所棟が建っています。

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(2階正面部分の窓は半円アーチの窓が設置され、瀟洒な雰囲気です)

 事務所棟は、1913年(大正2年)の建築。鉄板葺きの屋根に煙突を立ち上げた瀟洒な建物で、保存状態がとてもよく、白く塗った外壁の下見板張りがほぼ建築当時の状態で残っています。事務所棟は、現在でも「蔵囲夢」の管理運営を行っているそうです。正面妻面には、上川倉庫の屋号「上」の文字が残っているほか、屋根上部の塔(ピクナル)が目を惹きます。ファサード(建物正面)の窓はファンライトとし、ペディメント(出窓部分)などの装飾で飾っています。窓は1階、2階の左右にひとつずつ、計4つの縦長上げ下げ窓を配置しています。

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(煉瓦煙突が設置されています。正面妻面には「上」の屋号も見えます)

 近年、流通機構の変化に伴って、現地における倉庫機能としての役割は薄れ、上川倉庫群の解体も真剣に討議されました。市民をも巻き込んで大きな議論となりましたが、その結果ここに地ビール工場とレストランを誘致する案が浮上、さらに旭川駅周辺整備事業(北彩都プロジェクト)の一環としてこれらの建物が再生されることになりました。

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(この建物が旭川市の駅前中心部に残ったということが意義のあることでした)

 事務所棟のほか、現在は地ビール工場のほか、2棟はギャラリーとして、1棟は市民文化サークルのリハーサル室として、1棟はレストランとして利用されています。

 

※なお、こちらの掲載画像は、当ブログが独自に定めるガイドラインに基づき、ブログ運営者がみずから撮影したものです。

あしたはきょうよりもっといい日。