宿泊している蘭州市は、標高1,600mほどのところにあり、甘粛省の省都でもあります。また、黄河が初めて出会う大きな町としても有名です。黄河はこの町の北側を流れていくのですが、その両岸には高層ビルも建ち並んでいます。
きょうは、この度のハイライトのひとつ「炳霊寺石窟(へいれいじせっくつ)」を訪れます。「炳霊」とは、「十万仏」の意味だそうです。黄河の流れをせき止めて造った巨大な人造湖「劉家峡ダム」ができたため、その上流に位置していた「炳霊寺石窟」は、ボートや船でしか行くことができなくなったのですが、ボートでなければいけない石窟寺院って、興味がわきませんか。
宿泊していたホテルからマイクロバスをチャーターして、「劉家峡ダム」に向かいます。乗車時間は3時間ほど。ちょっとお尻が痛くなりました。「劉家峡ダム」についたら、さらに1時間ほど走り、そこからボートに乗り継いで30分ほどで、「炳霊時石窟」に到着します。
「炳霊寺石窟」は、ボートでしか行くことができないため、気候のよい春から秋に行くのがおススメです。冬も行けなくはないですが、かなりの極寒を覚悟しなければなりません。
黄河の流れと険しい峡谷によって、イスラム教徒による破壊や盗掘から守られたため、ここには貴重な仏像が多く残されました。特に注目なのは、第169窟(特別窟)。ここに残されている『西秦建弘元年』(西暦420年)という題記は「中国で最古の題記」とされています。題記とは、石窟の由来などを壁面に書いたもので、石窟が作られた年代を特定するのに役立ちます。
中央に鎮座する巨大な摩崖仏は、ビルの6階ほどの高さにもなります。現在は修復中で、足場が組まれていました。梯子をよじりながら登ると、その中央摩崖仏の頭上、向かって左側に大きな窟があります。第169窟(特別窟)です。第169窟に残された壁画はとても保存状態がよくて、1600年もの昔に描かれたとは思えない輝きに満ちています。
帰途、第172窟も見学しました。こちらも素晴らしかったです。ここに仏像を彫ったり、ここで修業をした仏師や僧侶たちは、どんな思いでいたのだろうかと、ふと思いを馳せました。
夕食に出た回族(イスラム民族)風包子(パオズー)「河州包子(フーヂョウパオズー)」。蘭州市から130kmほど離れたところに、回族の自治州があります。「臨夏回族自治州」と言うのですが、その土地に古くから伝わる家庭料理なのだそうです。「河州」の名前は、「黄河」から来ているのかな。にんじんと牛肉の餡が入っており、ラー油と黒酢をつけて食べます。こういう地方のローカル料理を味わえるのも、旅の醍醐味です。