「観るだけ美術部」部長のブログ

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あしたはきょうより、きっといい日。

[旅行案内]★アンコール・ワット.2(構造編)(カンボジア.5)

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アンコール・ワット.2(構造編)
主に砂岩ラテライトで築かれ、西側が正面とされています。寺院は、付近の製鉄技術を活用している点が興味深いです。境内は、環濠部分を含めて東西1,500m、南北1,300m。幅200mの濠で囲まれています。神聖な場所を飾るため、回廊は精緻な浮き彫りで埋め尽くされています。
 
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アンコール・ワットの西側から、正門を目指す)
 
西からの参道(正面参道)は、石橋で環濠を渡って進みます。石橋は、かつて乳海攪拌の様子を描いた蛇神ナーガの欄干で縁取られていたと伝えられていますが、現在は、堀に落ちており見られません。中ほどには、石段の船着場が備えられています。橋を渡り終えると、周壁と西大門へ至ることになります。
 
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                (西大門(正門に当たる)は、堂々とした建築物)
 
  
正門は、アンコール・ワットの西大門に当たります。正門の規模は、両翼230mもあります。正門の門上には3つの塔が並びます。中央塔の下部には、国王だけが通ることのできる門があり、その左右の塔の下部には、国王以外の人物が通る門が、それぞれひとつずつあります。また、その左右には、が通ることのできる門(象門)を2つ備えています。
 
正門の左右には、七つの頭を持つ蛇神ナーガの彫刻が施されており、付近の堀には、石造りの船着場を備え、ラテライトの壁で補強されています。
 
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(西大門(正門)から入場したあと、参道から振り返ってみる)
 
正門(西大門)を抜けると、大蛇の欄干に縁取られた参道を通り、前庭を進みます。前庭は、南北にそれぞれ経蔵と聖池があります。また北側には、現在もここで修行に励む僧侶らのために、僧坊が近年になって建てられました。前庭を越えると、三重の回廊に囲まれ、五つの祠堂がそびえています。
 
 
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(第一回廊 西側南翼 見事な彫刻が残っている)
 
第一回廊は東西200m、南北180mで、多くの彫刻が施されています。アンコール・ワットで見られる見事な彫刻は、ほとんどがこの部分にあります。
 
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(『ラーマ・ヤーナ』の一場面が彫られている)
 
西面北(左)側には、『ラーマーヤナ』の説話が幾つかあり、特にラーマ王子と、猿が、ランカー島で魔王ラーヴァナと戦う場面が大きく描かれています。ここの王子の顔は、建立者のスーリヤヴァルマン2世を模しているという説もあります。
 
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(こちらは、『マハーバーラダ』の一場面)
 
西面南(右)側には、インドの叙事詩である『マハーバーラタ』の場面が施されてあり、左から攻めるパーンダヴァ族と、右から攻めるカウラヴァ族の軍が、細かく描かれています。
南面西(手前)側は「歴史回廊」と呼ばれ、行幸するスーリヤヴァルマン2世と、それに従う王師、大臣、将軍、兵士などが彫られています。
 
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(これは、『天国と地獄』の一場面だそう)
 
南面東(奥)側は「天国と地獄」と呼ばれ、上段に天国へ昇った人々、中段に閻魔大王らとその裁きを待つ人々、下段に地獄へ落ちた人々が彫られています。地獄では、痛々しい刑が行われており、また下段から中段に逃れようとする罪人も見られます。
 
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(もっとも見事な、『乳海攪拌』のレリーフ。全長なんと49m)
 
東面南(手前)側は、乳海攪拌の様子が彫られ、神々と阿修羅らが、大蛇ヴァースキを引き合って、マンダラ山を回し、海を混ぜている様子が描かれています。
東面北(奥)側と北面全面は、後の16世紀頃に、アンチェン1世が彫らせたと考えられており、他とは彫刻の質が異なっています。ヴィシュヌ神の化身クリシュナが、怪物バーナと戦う場面が描かれています。
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(第二回廊から見上げる。見えている尖塔は中央祠堂)
 
第一回廊と第二回廊の間は、「プリヤポアン(千体仏の回廊)」と呼ばれ、南北に経蔵が建ち、十字回廊で繋がっています。十字回廊は、四つの中庭を囲んでおり、かつて中庭は雨水を湛え、参拝者はそこで身を清めたと言います。南側には、「森本右近太夫一房」の墨書が見られ、「ここに仏四体を奉るものなり」と書かれています。「プリヤポアン」には、信者から寄進された多くの仏像が供えられていたそうですが、クメール・ルージュにより破壊され尽くされており、現在は芝が生い茂っているのみとなっています。
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(第二回廊から見上げた精巧な造りの連子窓)
 
第二回廊は、東西115m、南北100mで、17段の石段を登って入ります。彫刻などは無く、何体かの仏像が祀られています。そこを抜けると、石畳の中庭に入り、第三回廊と、祇堂を見上げることになります。
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(疲れた脚にはきつい第三回廊への急傾斜な階段)
 
第三回廊は、一辺60mで第二回廊より13m高く、急勾配の石段を登って入ります。第三回廊への13mの石段は、非常に急傾斜です。登ることを諦め、ただ第三回廊を見上げ続ける人々も多く見られます。四隅と中央には、須弥山を模した祠堂がそびえ、本堂となる中央の祇堂は、65mの高さがあります。かつて、本堂には「ヴィシュヌ神」が祀られていたと言われていますが、現在は壁で埋められ、四体の仏像が祀られているのみです。第三回廊に囲まれた四つの中庭は、かつては雨水を湛えていたらしいのですが、現在は涸れています。壁面には、王宮の舞姫を模したという多くの女神が彫られ、参拝者の触れた痕が見られます。連子窓から外を見ると、周囲の伽藍とカンボジアの森林が一望できます。
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                  (第三回廊の連子窓から見たカンボジアの平原。
        夕暮れ時には、この連子窓から差し込む光が、美しい光景を演出してくれるそうだ)

 アンコール・ワットは、シェムリアップ市の中心部から北に6.5kmほど離れており、公共交通機関はありません。アンコール遺跡全体が、広い範囲に点在していることもあって、タクシー、三輪タクシー、バイクタクシーなどをチャーターするか、レンタサイクルを利用するのが一般的です。
 
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(第一回廊基部を、南東隅の尖塔側から見る。
幾何学的な構造が美しい)
 
アンコール・ワットは、西側を正面としており、午前に写真を撮ると逆光になるため、午後の観光が好まれます。日の出も美しく、早朝に訪れる観光客も多くいます。正面からは、年2度中央の祠堂からの日の出を見ることができます。

カンボジア政府観光局「アンコール・ワット」HP
★アンコール遺跡群フォトギャラリーHP
★「観るだけ美術部員」のブログ、「アンコール・ワット.1(歴史編)」へのリンク
あしたはきょうよりもっといい日。